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対抗意識

「夜中の二時、いきなり目が覚めたんです!」

 羽床さんは声が大きい。夜中、の強調。

「暗闇のなかに、浮かんできたんです! 顔が!」

 その顔、まさに憤怒の形相。恐ろしい顔の女であった。

「もう怖いし、どうしたらいいかわかんなくて、とりあえずこっちも目を見開いて口をへの字にして睨み付けたんです!」

 なんでそうなる、と鐘子は……突っ込まなかった。

「そしたら、そいつ、消えたんです!」

 羽床さん、ますます鼻息荒く。

「……勝ったわけね?」

「そうでもない気がするんです」

「どうして?」

「あいつ、消える瞬間に、吹き出しやがって!」

 怒りのこもった表情に、思わず鐘子も吹いてしまう。


 鐘子の後輩、羽床さんは十八歳。来年から華の女子大生である。
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