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嘘松

この話を綴りだしてから、何年が経ったか。

鐘子も、いつの間にか二十七。

尚樹、詩春、フェル、姉の鈴子。
鐘子は今でも仕事に行く度に考えることがある。

「ふみ姉」とは誰だったのか。

幼かった頃、ふみ姉という人物が鐘子のそばにいて、両親の帰りが遅かった鐘子の世話をしてくれていた。
茶髪のショートカットで、革のジャケットを羽織って、よく大きなバイクでやってきた。それでいて、お土産はキノコやニンジン(それも泥がついた)と、だけど料理はからっきし。何から何までとんちんかんな人だった。

ふみ姉には、鐘子が見たことや聞いたことをよく話していた。だけど、彼女が誰だったのかは覚えていない。今や彼女と話す方法もない。

そんなふみ姉がいつも疑わずに聞いてくれた話を、最近はTwitterに投稿する。
鐘子の話が注目を浴びることなんてまずないが(せいぜいフェルが意味不明なコメントを返すくらいで)、時々、フォロー外からコメントがつく。

「嘘松」

鐘子のアカウント画像は、イヤミである。

ふみ姉と亀

ふみ姉。

今日は亀が死んでいたよ。
アスファルトの上で死んでいたよ。
甲羅がバラバラ。
血だらけだった。

ふみ姉。

いつか一緒に行ったお池。
あれは下関だったね。
亀がいっぱい泳いでた。
たくさんたくさん泳いでた。

ふみ姉。

どうして亀がかわいそうなの。
どうして泳いでるの。
亀がかわいそうなの。
亀はどうして泳いでるの。

ふみ姉。

どうして亀が死んだの。
亀が好きなのに。
二人で食べたかった。
二人でいたかった。

ふみ姉。

亀が死んでいたよ。
亀が死んでいたよ。
亀が死んでいたよ。
亀が死んでいたよ。
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