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柳沢図書館の幽霊と私

わたし、みその、といいます。私はいわゆる見える人種です。今日は小さい頃からの親友のさやかちゃんに連れられ、“幽霊図書館”と呼ばれている町外れにぽつりと建っている柳沢図書館にやってきました。
さやかちゃんはいわゆるオカルトが好きで、そういう話やスポットをよく知っていて、私が見えるのを知っていて、小さい頃、私が起こしてた奇行を唯一理解し、ストッパーとなってくれていた。
そのお礼として、何度か付き添いでスポットを巡ってみたりもしている。
今日もその一貫だったりする。


「ねぇっ!どうっ?幽霊が出るって曰く付きの図書館だよ!?なにかいるっ?」

らんらんと目を輝かせこちらを見るさやかに私はあわてた。

「っ!ちょっ…だめだよ…!たくさん人がいるんだから少し小さい声でしゃべろ…?」

わたしがひそひそと伝えると、さやかちゃんはきょとんとした後、にんまりと笑顔を深くした。

「やっっっぱり居るのねっ…!ここっ…!」

両頬に手を当てて、興奮に目元と耳とを真っ赤にしていた。
ああ、今ここには誰もいないのかぁ…なんて思いながら改めて館内を見渡した。
学制服を着た黒髪の男性に狐のお面をつけた巫女さんのような衣裳の女の子と着物の女の子。長い黒髪の女性におかっぱに赤いスカートの女の子。真っ黒で長い長いフードをかぶった人とあれは…黒猫?

「あれ、ねこ?」

さやかがそちらに向かって歩いていく。黒猫は黒髪の男性と長い黒髪の女性と一緒にいて、自然と二人の視線はさやかちゃんへとむいた。
こういうとき、おばけは人に取りついてきたりするのだ。はっと思い出した私は怖くなってさやかちゃんの後ろ姿を追った。
黒髪の男性がさやかちゃんに手を伸ばしているのが見えた。泣きそうになりながら私が必死になってさやかちゃんの前に立ちはだかった。

「だっ、だめですっ!やめてくださいっ!さやかちゃん、悪い子じゃないし、ここを荒らしに来たんじゃないのっ!」

大の字になって二人の間に立った。たぶん私は半泣きだと思う。黒髪の男性は驚いた顔をしていた。

「えっ?みその?どうしたの?」

後ろからさやかちゃんの不思議そうな声が聞こえた。だってそうだ。さやかちゃんはただ猫を触ろうとしただけなのだから。
シーンと耳に痛い静寂が続いた。さやかちゃんは何か言いたいけど何も言えないのだろう。何度か喋ろうと息を吐く音がする。
私はというと、それを気にする余裕さえ無かった。なんせおばけに声を荒げたこともなければ、こんなに近くで目を合わせたこともなかったのだ。
黒髪の男性はさっきまでさやかちゃんにのばしていた手を私に向けた。ソレに気付いた私はぶるぶると恐怖に震えていた。

「っ!は!あっはっはっはっ!」

後少しで触れるだろう、その寸前に目の前の男性は耐えきれなかったのか笑いだした。まわりからは、彼の笑い声に同調するようにラップ音が鳴り響いた。さやかちゃんは「うわっ」と驚きに私に抱きついた。

「ごっ、ごめんねっ…ぶはっ、あの、いきなりこっちにっ!きたから…ははっ!悪戯しようと思っただけなんだ…!」

ひぃひぃと笑い転げる目の前の男性に私はぽかーんと口を開けるだけだった。気付いたらもう恐怖なんて何一つなく、震えも涙も止まっていた。

「…な、何もしないんですか?」
「何するもなにも、あなた方は私たちに何かしようとしに来たんじゃないでしょぉ?」

おそるおそる聞いたら隣にいた女性がくすくすと楽しそうに笑って私に言った。
もちろん、何かしようとなんてしたかったわけないのでぶんぶんと首を左右に振った。
彼女はまたふふふと上品な印象を持つ笑い方をして私を優しく撫でた。
二人が笑うとラップ音がするのはイコールらしく、さっきからばしばしと音がなっている。

「あぅ、なんか、あの、怖いおばけじゃないんですか?」
「あっははは!違う違う!何ていうの?彷徨ってたらここに着いたっていうか」
「そうねぇ、私も、死んだの自分の家だしねぇ」
「僕も僕も」

ころころと笑っているが話している内容は死因だ。笑うに笑えない。ネタがブラックすぎる。
あはは…と小さい苦笑を洩らしていたら足元に小さいぬくもりを感じた。

「ちょっと、貴方の連れ、物凄く怯えてるわよ」

猫だ。猫がしゃべった。
驚愕に口を開けていたがすぐにその内容を理解して後ろを振り向いた。さやかちゃんはぷるぷると可哀想なほど震えていた。

「あ」
「みっ、みそのっ…なっ、さっきから音っ!」

ぎゅううと私の背中を握り締めて訴える親友に気付くのが遅かったなとすごく申し訳なくなった。

「ごめん、さやかちゃん。大丈夫だよ。ここにいるおばけ、悪い人じゃないよ。」
「だ、音、さっきから」
「笑ってるの。怒ったり、暴れたりしてるんじゃないよ。大丈夫」
ぎゅうとさやかちゃんを抱き締めて背中を撫でた。ぽんぽんとリズムよくたたいて落ち着かせるように言い聞かせた。
悪い人じゃない、というのは決して間違いではない。現に先程まで笑っていた二人はおろおろと困ったように眉を下げて心配そうに見つめていたからだ。

「あーあー、その子やっぱり見える子じゃなかったかぁ、申し訳ない、申し訳ない」
「ごめんなさいねぇ、こわがらせる気はなかったのよぉ」

二人がいってる言葉をそのままさやかちゃんに伝えたら、おびえながら「本当?」と聞いてきた。
私がうんと笑って頷いたら、さやかちゃんはやっとひっそり笑った。





それからだ。私が“幽霊図書館”へ足を運ぶようになったのは。



続く…

幽霊図書館

本の虫君とかたぬきちゃん、おきつねちゃんに天井(あまい)さん、猫叉さんにはな子ちゃんに死神さん。そこに一般人は居ない。幽霊やあやかしばかりが集うのがこの幽霊図書館。
たまに来ても、何も感じることなく本を借り、出ていく。
そこに現われたのが零感のさやかとホラー苦手の見える女の子みその。


みたいなわけでもない話を考えてる。
SVSAとりんご農園、そして幽霊図書館!いい設定だよねぇ!ふんふん!(`´ω`´)=3
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