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喧嘩?ううん、じゃれてるだけ!



野球部に入部した南音を待っていたのは連休を利用した合宿だった。
今は合宿所に向かうバスに乗っているところである。
先ほど田島がなにやら騒いでいたが、あまり気にはしなかった(巻き込まれそうだったから)。

開け放たれた窓から吹き込んでくる風は弱く、それでも季節が変わりゆくことを教えてくれるには十分だった。
ぼんやりしながら流れゆく景色を眺めていると後ろの座席から誰かが身を乗り出した。それと同時に差し出された箱に少しだけ驚いて振り向けば、妙に緊張した顔つきをした人と目が合う。

「こ…これ、どう?」

緊張しているせいか声が裏返っていて、悪いとは思いつつ南音は耐えきれずに吹き出した。
懸命に笑いを堪えるがどうしても止まらない。それを見て相手は顔を真っ赤にさせて、きっと睨んできた(全然怖くないけれど)。

「ちょっ、飛鷹ぁっ!」

「ごっ、ごめんごめん!だって沖ってばすげぇ緊張して…ぷっ」

「いつまで笑う気だよっ!!」

顔を真っ赤にさせて笑う南音と同じように顔を真っ赤にさせて怒る沖の様子に見かねて、近くにいた栄口と西広が間に入る。

優しさに触れる時

元々同じ部活の十祈(とき)ちゃんにあげようと思っていたのだけれど、1人分にしては随分多くクッキーができてしまった。
さすがに全部あげたら迷惑だろうし(十祈ちゃんは「仕方ないなぁ」って言って貰ってくれそうだけど)、1人で片付けるにしてもやっぱり量が多い。

(クラスの友達にあげたらなんとかなるかな)

そう考えて小分けしてラッピングしていたら、そろそろ家を出ないと遅刻しそうな時間になっていた。

「おねーちゃーんっ、いってらっしゃーい!」

「うんっ、行ってきまーす!」

玄関まで見送りに来てくれた幼い妹の頭を撫でて、慌てて家を出た。



―――のが、いけなかった。



「…で、教科書置いてきちゃたの?」

「‥‥‥‥‥うん」

クッキーを配ることしか頭になかったせいか、机の上に英語の教科書を置いてきてしまったことに気付いたのは学校に着いてからだった。
今日は当てられるだろうから昨日のうちに予習したのだが、このままでは当てられるどころか先生に怒られてしまう。
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