(TOW2/色々)世界主、ディセンダー主
世界主≠ディセンダーです。ディセンダーはオペラです。
最近厄介事に巻き込まれたかと思えばパニールと共にアドリビドムの保護者と化していることに苦難していたカナメは、船長であるチャットからずいっと差し出されたものに首を傾げた。
「…なにこれ」
「さ、差し上げると言ってるんです!返品は受け付けませんからね!」
何故か顔を赤らめて照れたようにしているチャットと、その小さな手が掴んでいるダークムーン――つまりはサングラスを見比べる。そういえば、以前彼女が「魔物が落としました!」って言って喜んで見せてくれたものを「良いわね、それ」と微笑ましく思って返した気がするな。段々手がプルプル震えてきたチャットを見て、別にどうしても欲しかった訳じゃなくてただそういう眼鏡は色々と便利そうと思っただけなんだけどなーと密かに思っていたの改める。まあせっかくくれるって言ってるんだしねえ…?
「うん、じゃあ貰っとこうかな」
「ほ、本当ですか!?」
喜々として表情でパァアと明るくなったチャットにそこまで喜ぶものかと疑問に思ったが、珍しくスキップをしながら機関室に戻る姿に思考はそこで止まった。
だが、その日それから可笑しなことが続いたのだった。
仕事を再開しようとキッチンに戻れば、いつもよりニコニコと笑うリリスが「今日の家事は私達に任せて下さい!」とお玉を握り、クレアが「カナメとパニールは今日はお休みよ」とフライパンを掲げていた。奥を覗き込めば「頑張ります…!」とクナイ片手に食材と睨み合うすずの姿が見えて。……心配になったがその
笑顔に逆らえないまま部屋を出た。
仕事がなくなり手持ち無沙汰になり訳のわからないまま廊下で首を傾げれば、パタパタとジーニアス、ロイド、コレット、プレセアが走ってくる。何か用?かと振り向くと目の前に出された青い宝石で作られたペンダントと「カナメ!これプレゼント!」「俺が作ったんだぜ、凄いだろ!」「凄いでしょー」「…私も手伝いました」との言葉。手に無理矢理渡されれば受け取るしかなく手にペンダントが入れば四人は嬉しそうに戻っていった。
リッドとルカが慌てて走ってき、後ろから来るのはニヤニヤと笑うスパーダと後ろ手に何か持ったリアラとイリアで。嫌な予感がするまま眉を顰めれば、はい!っと手渡されたのは包みにくるまれた紅茶クッキーだった。「初めて上手くいったの!」とリアラが可愛らしく笑うがイリアが「本当よね…」とらしくなく溜め息をつく姿に青ざめる。「ちゃんと食えたぞ」「あ、味見はしたよ!?」とリッドとルカが言うので受け取れば、スパーダに「ロシアンだから気をつけろ」と忠告を貰った。…捨てることは出来なかった。
クッキーに溜め息をついているとマオが突撃して、そのまま歌い始めた。「カナメの歌だよ〜」と楽しげだったので一応お礼を言えばもう一回抱きついて楽しそうにユージーンに飛びついていた。
エステルにティア、フィリアとアニーからそれぞれ本を貰った。「私からカナメにです!」とエステルからは何故か犬図鑑、「これ、もう読んだから」とティアからは軍学校で使ってたらしい戦略本、フィリアは「読みたいっていってましたよね?」と確かに気になっていた発明などの論文集で、アニーは「お薦めですから!」とあまり読みたくない恋愛小説を受け取った。きゃあきゃあと戻っていく姿に途方にくれた。
立ち尽くしていればいつの間に居たらしいクロエとルーク、キールにミントのちぐはぐメンバーにギョッとすれば苦笑と仏頂面の両極端の反応を頂く。そのまま空笑いすると「はい、クロエさん」とミントに背を押されクロエから「う、受け取れ!」とエフェクティーリングを渡された。見たことのないものに首を傾げればキールが「攻撃から身を守る効果をもつものだ」と説明しルークが苦笑をしながら「大変だったんだぜ、探すの」と一言添える。クロエが照れたように手元に置くともう何も言えなかった。
そのままチェスターとアーチェ、アニスには特製の匂い袋の入ったぬいぐるみを貰い、ルビアとナナリーにファラはそれぞれ綺麗なリボンをそのぬいぐるみに巻いて、リオンはコッソリと甘い匂いのコロンを渡してきた。仕舞いにクレスに商品券を笑顔で差し出されれば、後ろからゼロスが「俺様を自由にしちゃって券プレゼント〜!」というのでイラっとして鳩尾を蹴ればヴェイグとセネルが溜め息を尽きながら運んでくれ、クラトスは券を燃やしてくれる。外を見れば選択物を干してくれているウッドロウとリフィル、アッシュの姿が見えて……。
なんだ、この至れり尽くせりは。
どんどん訳がわからなくなりプラスされていく重さに気力が削がれていく。
部屋に戻って1日籠もっとこうかと歩きだせば、後ろからひょいと荷物を取られた。「凄い量だな」と苦笑するガイに「俺も手伝うよ!」と明るいスタン、ついでに「やるねぇ」と感心したように口笛を吹くユーリがいる。いい加減頭痛が止まないので「一体何なの…」と溜め息をつけば、何故か驚かれ、「知らないのか?」と声を揃えて言われた。
「知らないって何を」
「今日だよ、今日!本当に何の日か知らないのか?」
「はあ?」
今日?胡乱毛に声を上げてしまえば「おやぁ、どうかしましたか?」とジェイドが登場し、ハロルドに「あ、これ私とジェイドの共同開発した『新・解析くん』。あげるわ」とオレンジのファンシーなパソコンが渡され更に眉間にシワがよる。
いや、本当に何なの。そう口に出せばジェイドとハロルドまで目を見開くが、問いかける前に外に続くドアが開き、見慣れた頭が突っ込んできた。
「お母さーーーん!!」
「ぐはっ!?」
「ダメだよ、オペラ!…て、」
「あらあらまあまあ」
慌てたようなカノンノと楽しそうなパニールの声を背景に、お腹の辺りにピタッと抱きついてくる我らがディセンダーのオペラのすてみタックルを喰らったままひっくり返った。衝撃を頭と腹にくらい仰向けになっているといきなり私を何故か母親と呼ぶオペラが私を押し倒したまま顔をガバッと上げる。ビックリしてハロルドに渡されたパソコンを避難させればジェイドが保護してくれ、次いでオペラが続けた言葉に思いっきり固まった。
「お母さん、いつもありがとうございます!!はい、母の日!」
「………………はい?」
「お前本当に知らなかったんだ」
「あらら、じゃあ訳わかんなかったかもね」
「はは…の日?」
いや、存在は知ってるさ。しかしこっちの世界もあるのかよ。色々言いたかったがそんな疑問より自分が感謝される対象になってることに何よりもツッコミたい。パニールがやけにオシャレをして嬉しそうな顔をしているのが見えて、確かにパニールが感謝されて母親だっていうのは分かるけど…っ。
ああああと頭を抱えそうになればその寸前でオペラからハイっ!と差し出され……顔を覆うほどの花束に目を丸くした。
「カノンノにね、今日はお母さんを大事にする日だって聞いたの!」
「私にとってお母さんはパニールで、オペラにとってのお母さんはカナメでしょ?だから何か準備しようって話してたらチャットも参加するって言って、」
「それで全員にも伝わってこの日は負担を減らしたりプレゼントしたりって決めたんだよ」
カノンノが笑って「私とオペラからだよ!」と花束を指すのを見ながらパニールが「私は今まで見たかった劇に連れて行って貰いましたよ」とやけにウキウキしている姿に微笑ましく思う一方…――なんか脱力しそうだ。この年で母の日体験って…しかも全員って…。涙が出そうなんですが。ユーリ、ジェイド、ハロルドがニヤニヤしているのが見えたから半分ぐらいは面白がってるなと拳を握る。プルプル震える拳をどこにぶつけてやろうかと思うが、
「…お母さん、ダメだった?」
まだ腹にしがみついているディセンダーの淋しげな声に、うっと動きを止めた。
ウルウルと子犬のような目で見てこられるともう何も言えなくなる。というか泣かれるのは嫌なんだよ。
はあ、と溜め息を一つついて上半身を起こし花束を受け取る。かなり複雑だが一生懸命作ったようなものに苦笑いしながらオペラの銀髪を撫でれば、再度私の背中は床と挨拶するのだった。
余談だがルーティに手作りのカバンを渡そうとして叩かれたらしい(でもルーティは受け取ったそうな)カイルには同じく手作りのヨレヨレとしたカバンを、自分をオバサン扱いしてんのかと憤慨していたルーティからは髪飾りを貰った。
…ってか私こそあんたらから貰う理由なんてないんだけど。ちょっと。
母の日既に短編。戒さんと話してできたカナメとディセンダーの共演設定が楽しかったから思わず書きました。やっぱり世界主はこれだな!(…)
あ、コングマン忘れた←←