父上が暗夜王国国王になってから前よりも過ごす時間が少なくなった。父上は早い朝から夜遅くまで政務ばっかりしている。その疲れは日常的に見ることができる
「おとーさん。起きて。」
「カンナ起こしてくれたのか。」
「うん。ねぇお父さん眠いの?」
「今日のはたまたまだ。」
「そんなこと言ってお父さん椅子でうたた寝しているでしょ。先月も。先週も。一昨日も。ちゃんとベットに入って眠らないと駄目だよー。」
「もう座りながらの仮眠は慣れている。何も心配することではない。」
「ねぇお父さん。僕本を読めるようになったよ。僕が読み終わるところを見てもらってもいい?」
「ちゃんと読めるか。」
「大丈夫だよ。読んでいる本はお父さんに聞かせればあっという間に眠れるよ。」
「カンナは優しいな。では仕事を終わったらカンナ私に本を読み聞かせよ。」
「うん。」
カンナの髪を撫でて話す父上。誰が見ても親子の何気ない会話にしか見えない。
だけどジークベルトはマークスの他の顔を見ている。
それは少し前。
コンコン。
「ジークベルトです。父上いますか?」
部屋から反応はこない。試しにドアノブにてをかけた。あれ?開いている。ドアを少し開くと暖炉の火の前で椅子に座る父上がいた。
「勝手に入りますよ。」
「‥‥」
それでも反応しなかった。ひょっとしたらうたた寝しているのかな。ブランケットを拾うと父上にかけようとした。後からそーとそーと。
「ひっ!?」
父上は起きていた。紙らしき物が燃えた暖炉の火を眺めながら怒りのような顔をしていた。元々顔が怖い人だけど怒った顔が数段に怖かった。恐ろしくてブランケットを落とした。マークスはジークベルトに気づくとすぐに元の表情に戻った。
「すまない。ジークベルト来ていたのか」
「父上何を燃やしていたのですか?領収書ですか?」
「違う。これは見合いの催促だ。」
「見合い?」
「男女が会って結婚にこぎつけようとする活動のことだ。」
眉間の皺をしかめながらお見合いについて説明をした。
「暗夜国王の私と結婚すればその人は暗夜王国の妃になる。その人のことをジークベルトとカンナは母親と呼ばないといけなくなる。それは権力欲しさでも。性悪女でもだ。」
「父上顔が怖いです。その前の顔つきよりも怖くありませんが。」
「それはいつだ?」
「頻繁です。子供がいる家族にも。子供を連れた貴族の婦人を見ていた時も鬼のような顔で睨んでいたじゃないですか。」
さらに手紙と絵を取り出す。それを暖炉に放り投げた。
「フッ。目の錯覚だ。気のせいだ。」
開き直った!
「権力目当てでの結婚なら暗夜の王族として迎えられない。第一私にはすでに子供を二人もいる。それを知っていながら結婚してあげるという女はお断りだ。」
「父上はどんな女性となら結婚がしたいのですか。」
「昔はいった。だけど今は暗夜王国を尽力が出来てかつ聡明で肝のある娘しか興味がない。」
「昔っていうと?」
「長い時間を過ごした女性だ。美しく人の気持ちに敏感で。今ではもういない。ずっと前から告白したかったことも伝えられず遠くへ離れて行ってしまった。」
父上はそう呟いた。父上が片想いしていた女性。
「今はもういない人の話はおしまい。」
父上は私やカンナ以外の子供にはキツく睨むことを自覚していない。攻撃的にならないけど眼力だけでも野犬も逃げれるくらいに睨めることにも。
終わり。