「ウフフフフフ。なかなかよかったわ。半狂乱になる王族様の顔と言ったら。」
リリスは、嗤いながら意気揚々と花園を歩きました。
「あら?空間が歪んでいる?覗いてみましょう。」
歪んだ空間に穴を開けて覗いてみると金髪の少年がうずくまっていた。耳を凝らすと少年が泣いていた。どうして泣いているのかしら。リリスは、少女から星竜に姿を変えて歪んだ空間にはいっていきました。
金髪の少年は、近づいてくる竜に気づくと驚いて逃げようとしました。
「ぶっ!」
慌てて立ったせいで足が縺れて転んでしまった。顔つきは、小難しいそうで凛々しい印象があるのに見た目よりも。
「どんくさい」
「うっぐひっく。ひっく。」
「あのどうしてあなたは泣いているのですか。泣いていても以心伝心できませんよ。」
金髪の少年の方は、目を擦るなり小さな竜を見るなり細い声で
「‥‥君は、何?金魚?」
「金魚でなくて星竜です。リリスと呼んでくださいな」
「リリス」
「大きな声でも出せるじゃない。」
「竜は、強くて大きいのがいるとあったのに。君は、小さい魚みたいだね。」
「あんなのは、人が作った想像です。竜といっても竜には、種類が多いのです。私からの答えは、以上。私への質問にあなたが答えなさい」
「うっ。うわぁぁ。」
「もう男の子は、そんなに人前じゃなかった。竜の前で泣きません。」
「うっ。」
また目を擦り姿勢を正すとリリスに張りのある声で言った。
「ただの男の子じゃない。僕は、暗夜王国第一王子マークスだ。」
「ということは、ゆくゆく王様になる男の子なのですね。」
マークスの顔がひくついた表情になる。
「国王になんかなりたくない。」
マークスがリリスに背を向けると落ち込んだ。
「序列に優位だからいいではないですか。」
「現国王の本妻の第一子であっても王室の人間は、序列優位が理由で惹き付けられると思ったら大間違いだよ。」
少し怒ったような顔でリリスを睨み付けた。
「では、貴方は、それにあぐらをかかずに様々な努力をしてきた。結果を出してきた。」
「うん。父上の権力欲しさに群がる人間からも守れるように。」
マークスが手を握りすぎて血が出てきた。
「僕は、亡くなった母上を愛している父上から守れなかった。身体を売って父上の権力をあやかろうとした何人の女から守れなかった!」
「目の前で女の人が貴方のお父様で激しいところを無理矢理見せられたのですね。」
マークスの目から涙がこぼれ落ちた。悔しさやら悲しいやら顔を歪ませた。
「僕は、父上のような誇り高くも愛情深い国王になりたい。でも権力欲しさに答えて分け与えたりする国王には、なりたくない!」
「マークス様は、現国王様のことを敬愛されているのですね。」
「敬愛?」
「その人のこと敬い思いを抱きながら愛情のことです。」
「リリスは、物知りだな。」
マークスの顔が明るくなった。打ち解けてきたのだろう。
「マークス様星界にある不思議の国へ行きませんか。そこへ行けば貴方のなりたい人になれます。」
「なりたい人に。不思議の国へ行くだけでいいのか。」
「えぇ。不思議の国へ行くだけであっという間に貴方の思い描いたことにもなれます。」
「行きたい!案内してくれ。」
これには、即答した。
「では、案内する前に貴方に約束したいことがあります。」
「なんだ?」
「アリスに相応しい称号を手に入れてください。」
「女の名前だな。もっと他に名前がないのか男の名前とか」
「不思議の国での重要な名前は、アリスだけなのです。」
「アリスとは、どうやればなれる?」
「アリスになれるようにすればいいのです。では、暗夜の第一王子マークス様私についてきてください。」
リリスの言う通りマークスは、歩き出した。光が見えそこに入る。
「いってらっしゃいませマークス様。」
続く。