アクアを秘境の島に送り届けた。
「送り届けてくれてありがとうカムイ」
「アクア元気な赤ちゃん産んでね。」
護衛として着いてきた父の隣でカンナを抱っこしてディーアは、家族と過ごす時間が終わろうとしていた。
アクアと別れて次にカンナを預ける秘境の隠れ里に向かった。川に囲まれた村で小高い畑と家から離れたところに水田があり外れに森と山に囲まれたのどかな場所だった。
「カンナを産んだ場所に戻るのは、久しぶりだね。」
母がくぅぅぅと伸びをした。確かに自然のある空気は、美味しくのんびりと過ごすには、いい場所だ。自分がいる秘境よりは、ずっと。
「ジョーカーさん、ディーアこっちだよ。世話係に挨拶してこようよ」
手を大きく振って世話係がいる家に向かった。
「カムイ様ようこそ里に遠い所からおいでになってお酒とごちそうでゆっくりとお過ごしください。」
世話係の言葉に甘えてご飯にありつけ一晩過ごすことになった。正確には、母が少し酔いつぶれ
「ディーア、カンナ離れていっても私は、母親だからちゃんと覚えていてね」とか「ジョーカーさん二人と離れたくないよー」とお酒が入ったことで泣き上戸になったことでまともに歩けないくらいに母が眠ってしまったからだ。
「ディーア少し席を外してくれ。」
「えー。でも」
「うるせぃ。チッチッいったいった。」
父は、母のことになると頑なに離れようとしない。もうディーアからすれば日常茶飯事になっているので時間を潰しにカンナをおぶり秘境を歩くことにした。
「カンナ星がよく見えるなぁ。俺のいた秘境は、どんよりと曇りが多くてなかなかこの秘境のように星がみえなかったぜ」
背中に伝わる赤ん坊の体温は、ディーアにとって温かい。カンナはすぅーすぅーと眠っていた。
「ディーア探したぜ」
「父さん」
ジョーカーは、ディーアの頭をくしゃりと撫でる。
「父さん次は、いつ会える?」
「ディーアまたそのはなしか。しばらくすれば会いに行くぜ。」
「俺は、このまま城にいると思っていたのにまた秘境に戻されるのも嫌だぜ。」
「おいおい。この間敵前逃亡している奴がまた城にいることは、百年はやい。俺の組み手に勝ってから言え」
「意地悪だ。あれが苦手と知ってて」
優美に笑う父に不貞腐るディーア。
「ディーアまた顔を出すからお前もしっかりと執事も体術も磨け。いいな。」
父に手を引かれ泊まっている家に帰る。
「ディーア。また私も来るからね。」
朽ちた屋敷の前で母は、泣きながらディーアを抱き締めていた。美しく優しい母の第一印象がディーアの中では泣き虫な母親と変わった。
「母さん苦しい……」
ジョーカーが嫉妬深い目線が痛い。
「今度は、ジョーカーさんと一緒にディーアに会いに行くからね。病気になったら飛んでも来る。怪我をしたら看病しにいくからね」
「その時は、甘えさせてくれよ」
母の頬にチュウをした。子供のうちにやっても母の愛情表現をしてもいいよな父さん。
ディーアは、両親が見えなくなるまで手を振っていた。秘境の外へ少し過ごせなかったもののディーアは、忘れなかった。父とは、年に何回しか会えないが母親と弟がいるぬくもり。リョウマ叔父さんヒノカ伯母さんサクラおねえさんタクミ伯父さんアクアさんと過ごしたことも。また父に会ったときには、相手が武器を持っても素手で倒せるよう鍛練しよう。
小さいころのディーアお話は、これでおしまいです。