掃いて捨てる

0130 :彩雲国
兄弟(デザイナー龍蓮×モデル楸瑛)


Twitterの診断メーカーより


デザイナー龍蓮×モデル楸瑛



モデル業を始めた楸瑛を、兄弟だからと無理を言って自分の専属モデルにしたのが7年前。その頃最年少デザイナーとして奇抜な服をばかり創り出していた龍蓮のデザインは、周囲が驚く程にすぐ上の兄に似合っていた。

「楸兄上のためだけに作っていたのだから、当たり前」

麗しきデザイナーとモデルの兄弟として雑誌の取材を受けた際に、龍蓮が発したその言葉は至るところで話題になったが、それ以上に変わることなく『兄弟』であった2人の関係に波紋を呼んでいた。


「龍蓮、君はもう少し言葉を考えて話せないのかい?」

「嘘はついてない」

「でもね、龍蓮…この発言は、なんというか…」


言葉を選ぶように宙をさ迷う楸瑛の視線。
その横顔を見ながら龍蓮は小さくため息をつく。
こんなに分かりやすく、『服』というカタチに、今回は『言葉』にまでしているのに、この兄は自分の発言を浮世離れした弟のうっかりだとしか思っていない。
ほんの少しも、意識してくれてはいないのだ。

採寸のためとすっかり覚えてしまっている兄の身体に触れ、針が刺さるからと裸の兄に服を着せる。
そんなひとつひとつにどれだけの欲情と葛藤があったかなど、この兄は何一つ気付いていない。
気づかれたいのか、このままでいたいのか分からないまま年月ばかりが過ぎていが、広げた雑誌の見出しに何となく限界を感じていた。


「楸兄上は、わたしの服が好きか?」

「君は私の話を聞いていたのか?」

「好きか?」

「…そうだね、こうして部屋着にも君のデザインしたものを選んでしまうくらいは好きだよ」

楸瑛の言う事を無視して問いかければ、優しい兄はため息ひとつで許してくれる。
甘やかされていると思うし、彼の唯一の弟ということで大事にされているとも思う。
それだけで良かったのだ。
良かったはずなのに。


『藍龍蓮の異様な執着』
『デビュー作から兄のためだけのデザインと断言』
『仲の良すぎる兄弟』


開いた雑誌に書かれた文字が目に焼き付く。
こんな週刊誌のたかが1ページ、世間はすぐに忘れるだろう。
それでも鈍い兄が何か言いたげな視線を向けてくるほどに2人の間にはなにかを投じてしまったのだ。
決意したような顔で見上げてくる楸瑛を、無表情に見下ろす。


「龍蓮、私たち少し離…っ」


開いた口を塞ぐように、触れた唇は涙が出るほどに甘かった。



終わり





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