そんな感じでネタでございます。
追記からどうぞどうぞー。
……これ転生カテゴリに入れるべき?
鬼男くんは酷く咳込むことが増えた。今にも血を吐きそうなくらいに咳をするけど、すぐに口元を拭うようにして仕事を再開する。そしてまた咳込む。
分かっているんでしょう?と、尋ねたくてしょうがないとばかりに疼く胸を蹴飛ばしてやってから、何でもないように俺は言う。何でもないように。
「ね、あといつまでかな」
返事はなくて、咳込むのと書類を整理する紙の音だけが寄越される。そんなに眉をひそめちゃって、綺麗な顔が勿体無い。
「ねー、鬼男くん」
今度は何の意味も雰囲気も込めずに、誰かが誰かを呼ぶ程度で名前を呼んだ。
ようやく振り返る鬼男くんの顔は別に青ざめてもいないし苦しげでもなくて、ただただいつものように、不機嫌にも取れるような整った顔立ち。
俺は笑った。声に出してじゃなくて笑顔を作ったと、そう言えばきっと正しい。その笑顔がくしゃっとしてるのかあるいは何か企んでるのか、微笑みなのかニカッと笑ったのか、それさえ自分のことの割には曖昧であったけど。
「休憩しようよ」
「馬鹿かお前」
「ちょ!上司に向かっての返事が馬鹿かって君ねぇ」
「開廷して何時間か経ってからそれを言えってことですよ。まだ一時間も経ってないのに休憩だなんて、馬鹿じゃないなら阿呆です」
小さく咳込む合間にも辛辣に鬼男くんは言う。よっぽど仕事したいんだなぁ。そんな躍起にならなくたっていいじゃない。
君に今更出ていかれたって、代わりは幾らでも居るって言ってるでしょう?
本当は傍にいるのすら辛いはずなのに、君は薬を使ってまで俺の傍にいる。ならそれはなぜ?
君は俺を残して行ってしまうくせに。そんな中途半端に同情されても俺は感極まって泣いたりとか、しないんだけどなぁ。
とりあえずそんなことはさて置いて、俺も休憩を勝ち取りたいもんだからじぃーっと鬼男くんに目で訴える。背中を向けようが無視されようがずっと。そうしたら鬼男くんはやっぱりいつものように折れてくれた。
「……分かりました。じゃあ、あと二時間後に休憩入れましょう」
「やたー!」
「ただし三十分ですが」
「えー…君はそれでいいわけ?」
「はぁ?僕が休憩したい訳じゃないんですから、そんな事聞くまでもないでしょ」
「まぁ三十分もあれば大丈夫だよね。薬飲むんなら」
「別に飲む必要はないですけど。風邪薬ですから」
「あー、いっけないんだー。嘘つきは閻魔様にチクって舌引っこ抜いてもらっちゃうぞ」
「閻魔はお前だ。て言うか大王にだけは嘘つきだとか言われたくないですね。不愉快ですから」
じろっと睨んでくる鬼男くんに相変わらず笑いながら、手厳しいーと怖がるふり。溜め息をついて鬼男くんは仕事に戻る。
やっぱり咳込みながら仕事をしてる。そして多分、そうなったら俺の声は完全にシャットアウトしてるんだろうな(もっとも、俺も余程じゃない限りこんな集中してる鬼男くんに声はかけづらいわけだけど)
しかし、嘘つき呼ばわりしたら不愉快、ね。
「どっちが不愉快になってると思ってんのかなぁー、それは」
そんなことを呟いても聞こえないんだしと割り切って、俺も目の前の仕事に専念することにした。
***
鬼男転生前。互いに思いが強すぎてすれ違うもんだからいっそ初期以上に険悪でもいいかも。でも最終的には仲直りすると思うとか抜かしてみますゴメンナサイ、仲良し天国が大好きなん、だ!!。
2009-11-4 18:56