鞭使いの怪人よりも強力な怪人2体は未だ倒されず――
いちかと朝倉は桐谷と合流、鞭使いより上位の怪人と交戦中。ノーダメージで撃破はかなり難しく、さらにどこからか爆破も加わるために苦戦。
これじゃあ爆破祭りみたいじゃんかよ〜。
「弱点は胸じゃないようですね」
「えっ!?」
桐谷の見解に驚くいちかと朝倉。
「胸以外を狙いましょうか」
「ラジャー」
いちかはやる気満々。朝倉はマシンガンを構える。
「時任さん、至近距離は避けなって!銃使って銃!」
朝倉はいちかに注意してる。あんな上位の怪人に至近距離で攻めたらソッコー無限牢行きだ。
朝倉達も御堂と霧人が無限牢にいることを知る。
よりによってあの2人が牢屋にいるなんて…!
最終第3ウェーブは牢屋にいるプレイヤーも救出しないと、完全にはゲームクリアにはならない。
制限時間内にプレイヤーを救出出来なければ、無限牢にいるプレイヤーは元の世界に戻れない。
朝倉達3人は上位怪人の弱点を発見する。
「腰よ!腰を撃って!!」
いちかは専用銃で腰を狙うもうまくいかない。朝倉はマシンガンで狙い撃ちにした。上位怪人1体撃破。
「この怪人、マシンガン使わないと腰を狙えないわ」
「あと1体残っているっすよ…。それより、無限牢にいるたいちょーとしぶやん助けなくていいの?」
「助けないとクリア出来ないけど…私は紀柳院さんと暁くんが気になってる。
ルール変更にあった、『無の存在』がプレイヤーに関係しているってやつ、私達にも関係してるってことよね!?無の存在の正体がプレイヤーに関係してる誰かってことなんでしょ!?」
桐谷はスマホを見た。
「鼎さんは無の存在2体を味方にして3体目を探しているみたいですが…、フィールドが広大なぶん苦戦しているようですね」
「桐谷さん、時任さん。紀柳院さんは無の存在を解放させたいのよ。記憶を消された人間だとわかった以上、彼らを元に戻したいじゃない!
なんで時空を漂う存在になったかはわからないけど、ゲームマスターが怪しいんじゃないの?」
「朝倉さんもそう思いますか」
桐谷の見解も朝倉と同じだった。
そんな中、鼎から意味深な通信が来た。それはプレイヤー全員に向けてのものだった。
「無の存在3体目を発見した。2体目と3体目の正体がわからないから画像を添付した。画像を今すぐ開いてくれ。
私が先に味方にした1体は『私の知り合い』だ。名前もわかるが反応してくれない…」
「知り合い!?」
御堂は大袈裟に反応。
「無の存在は何者かによって記憶を消され、この異界に来たらしい。そして時空を漂う存在となってしまった…。
無の存在は喋ることは出来ないが、素直に言うことは聞くし健気だ。…痛っ」
「鼎どうした!?」
御堂は必死に叫ぶ。晴斗は代わりに伝えた。
「鼎さん、爆破に巻き込まれて怪我したんだよ。無の存在さんが手当てしてくれたんだ。でも足痛そうで…応急措置だから仕方ないんだけど」
「爆破で負傷は牢屋行きにならないのか…」
晴斗はとにかく無の存在2体について説明してる。
「ルール変更で『無の存在はプレイヤーに関係してる』ってあったでしょ?だから鼎さんは無の存在さん2体の画像を送ったの。
最初の画像の人は仮面慣れしてなくてゲーム前はふらふらしてた。でもゲームが始まるとスイッチが入った。なんか頼りないけど、俺達を必死に守ってる。
次の画像の人は背が高い。スラッとしてるの。無の存在さんは仮面で顔は見えないけど、この人はスタイルいいように見えるんだ。やけに戦闘慣れしてる」
戦闘慣れ?
御堂は気になった。高身長でスタイル良くて戦闘慣れしてる。なんか引っ掛かる。
この鼎からの通信と画像を見て反応したプレイヤーはもうひとり、いた。朝倉だ。
朝倉は無の存在Bが引っ掛かった模様。
ゲーム前は仮面慣れしてなくてふらふらしてたのに、いざゲームが始まるとスイッチが入ったって…。しかも必死にプレイヤーを守るあたり、あいつに似てる気がする。
「まさか…あいつなわけ…ないわよね…」
「朝倉さん、どうかしたんすか!?」
「無の存在の1人、もしかしたら私に関係してるかもしれない…。推測だけどね」
無の存在BとCは御堂と朝倉に関係しているらしかった。
「紀柳院さん!無の存在を全員味方にしたの!?」
「…したよ。爆破祭りで散々だけどな…」
「そのうちの1人はもしかしたら…私が知ってるかもしれない…」
「鼎、俺も心当たりがある。俺のことはいいから、そいつら3体をそのまま味方にするんだ」
「和希はずっと牢屋にいるのか!?」
「霧人と一緒に攻撃受けて無限牢行きだよ。鼎、心配すんな。ぜってぇクリアしてやるから」
「クリアしてやるって…無限牢にいる時点で難しいだろうが!!」
御堂は少し強がりを見せる。
「お前だけでもいいから元の世界に戻れよ」
「嫌だ。何自己犠牲しようとしてるんだよ。和希らしくもない…。今の和希は…強がってる」
鼎に見抜かれた。声だけでわかるのか!?
朝倉達はもう1体の上位怪人をなんとか撃破する。
「ふー。上位怪人2体ともやっつけたわよ。時任さん、桐谷さん。牢屋に助けに行くわよ。
なにがなんでもクリアしてやんだからね!!」
いつの間にか朝倉が仕切っていた。
「朝倉さん、頼もしいですね。では助けに行きましょうか」
最終・第3ウェーブ開始から約30分経過。残り時間は約15分。
朝倉達は無限牢から御堂と霧人を救出。
「待ちくたびれたぞ!!」
「たいちょー大人げないっすよ…」
「鼎と晴斗はどこにいるんだ?」
霧人はペースを崩さない。
「フィールドの端を目指しているようです。何かあるんでしょうか?」
「きりやん、今きりゅさんと暁くんがいる場所…大爆破地帯っすよ!!怪人は出ないけどかなり危ないところだよーっ!!」
大爆破地帯!?
フィールドの端。鼎と晴斗、それと無の存在3体はある場所を目指していた。
それはゲームマスターの館だ。
御堂達も鼎の意図を察した。ゲームマスターか!
でも鼎の居場所まで距離あるぞ。どうすんの?
いちかは江戸時代と大正昭和の異界のちぐはぐな街並みを見て、あることに気づいた。
…大八車があるじゃん!
いちかはすぐに行動を起こす。
「いいもん見つけたっす」
「大八車!?」
「なんで俺が大八車ひく係なんだよっ!!」
御堂、嫌々大八車をひいている。
朝倉といちかは大八車の中に乗っていた。桐谷と霧人は銃を構えながらダッシュ。怪人を撃破しながら鼎達と合流を図る。
朝倉は鼎と通信した。
「紀柳院さん、無の存在のひとり…私知ってるかもしれないの。
御堂さんも…そんな感じだって」
無の存在BとCは朝倉と和希の知り合いだと!?
「まだ推測なんだけどさ。なんで無の存在の記憶が消されたのか気になってて…。紀柳院さんの知り合い…反応しないの?」
「私の素顔を見せたら少しだけ…反応していた。私はそいつに1度だけ、素顔を見せたことがあるからな…」
「それでゲームマスターが怪しいと思ったわけか。
私達も今そっちに向かってる。そっち大爆破地帯なんでしょ!?死なないでよ!!」
「絶対に生き残るから」
通信が切れた。御堂達はマップを見ながら合流地点を探す。
鼎は瀬戸口らしき無の存在Aに必死に呼び掛ける。
「本当に覚えていないのか…?紀柳院鼎だよ。お前は…『瀬戸口葉』なんだろ?」
無の存在Aは無反応。記憶を消されたのは本当らしい。でも鼎の素顔を見た瞬間、一瞬目を背けたように見えた。
無の存在Aは少しずつ何かを思い出しかけていた。
「あ…ああ…」
「鼎さん、無の存在Aさんが何か言いかけてるのかな?思い出しかけてんのかも」
「…お前は何者だ?思い出せ!私を知ってるはずだろう?お前達3人にはちゃんと『名前』がある。思い出せないだけで…。
記憶を消されたんだろ!?」
無の存在Aはいきなり頭を抱えた。何かを思い出しかけている…。
そんな中、残り時間は約10分に。
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