掃いて捨てる

1011 :セイント・バトラーズ
交錯する想い(ジン×アンディ)


交 
 錯 
  す
   る

    
     






気持ちの良い朝だった。
気温ももちろん、アンドレアの体調が驚くほどすっきりとしていたのだ。



「アンドレア様、おはようございます」

「おはようジン、なんだか今日は気分が良い」

「そうですか」



素っ気ない口調ではあったが、微笑みまではいかずともがジンの口元が少し緩み安堵した表情を浮かべた。
部屋のカーテンを開き、明るい朝の陽ざしを取り入れる。
そうしてから、アンドレアの前まで戻ってくると前かけに手をかけ開き始める。
もちろん着替えるためだ。



「今日は如何なさいますか?」

「気分が良いと言った」

「かしこまりました」



下着を着せ、上かけを取る前に声をかける
アンドレアの返答に頷いたジンは外出用の上かけをさっと肩にかける。
アンドレアの瞳と同じ、薄いスミレ色のコートは比較的動きやすい服装だった。



「ジン」




首元のクラバットを結ぶ途中で呼びかけられたジンが、目線を合わせるように少し上を向く。
しっかりと重なった視線にジンは無表情に驚いた。



「なんでしょうか」




それでも視線を外すことも、顔を離すことなく淡々と問いかける。
途端にアンドレアはむっと唇を突き出し子供のようにむくれた。
その様子はあまりに可憐であったが、ダイヤより硬いジンの理性がその程度でブレるわけがない。
その程度で崩れていては入浴の手伝いなどできるはずもない。
相変わらず無表情のジンにアンドレアはますますむくれ上がった。
視線をクラバットに戻してしまったのも気に食わない。



「ジン」

「なんでしょ――っ!?」



再度呼びかけ、顔を上げたジンがは瞬間、唇に温かい感触を感じて絶句する。
アンドレアの桜色の可愛らしい唇がジンの引き結ばれたそれに重なっている。
驚愕に目を見開くジンの様子にアンドレアは満足気に笑った後すっと身を引いた。
離れていく熱にジンは無意識に追いすがりそうになるが、ぐっと耐える。




「たまには表情筋を動かさないと老けるぞ」



楽しそうに笑いながら言うアンドレアに、いたずらをした時の言い訳のようだと思った。



「善処いたします」



クラバットも結び終え、すっと身を離しながら出来るだけ冷静な声で答える。
靴をはかせるためにしゃがむことで、顔を見られずにすむことにほっとする。
先ほどの行動を、何故?と問うのは憚られた。
否、問えなかった。


口づけしたことで気付いてしまったことがある。
この聡明な主人はもう気が付いていたのだ。
執事長が主人に抱く邪な感情に。


そしてジンは分かっていた。
アンドレアが決してそういった感情をネタに遊ぶような性格ではないことを。
口づけという神聖な行為を遊び半分で行うような人ではないのだ。


そしてその答えは決して口に出せるものではなかった――。






END




順当にのろのろ発展していく予感


(追記は聖執事sについでだらだら)

あとがき



>
r e v n e x


-エムブロ-