『水晶萬年筆』 吉田篤弘 著

不思議なお話でした。水に関わる物語、夜を歩く、どこをとっても興味の有る事柄に繋がっていて、おや?と思いながら読み進めました。
ビニール傘の良いところはとても共感するもので、雨の形が見えるというのは不思議なものだなぁ、って思いながら透明な傘越の雨粒を見ていたこともあります。同じ感覚と巡りあえて不思議な気分。
"三千世界の鴉を殺す"この都都逸も好きな言葉並びです。視覚的に物騒な物言いですが、噛み砕くと「静か」って意味なの表現の方法は際限ないもんだなぁ、って思った言葉。これも触れられていました。
言葉は存外自由性が有ることも楽しいし。「言葉さえあればそれに物事が従う」、人の名前にしても(物語のなかで明確な存在名出てこなかったな)人間が一人で存在すると存在を証明できないけど、二人以上で存在記号=名前を呼ばれたら「自分はそういう存在なんだ」って認識する、それも言葉に物事が従うことの一貫にも思う。その現象ってよくよく(よくつく)考えたら人間特有の、言葉があるからこその文化であって、動物や植物はそれがなくても存在しているのは不思議だなぁ、とそんな気持ちが思い起こされる不思議な話たちでした。
こういうファンタジーともとれる現代の何処かの時間にあったような物語の作りが好きです。
あと一編目で友人の呼び名と同じ名前が出てきてふふっ、となりました。本名のイニシャル呼びでweb媒体にあげさせてもらっていた名前。こんなところで巡り会うとは(笑