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prof  bkm  clap!

2024.4.25


村田沙耶香『信仰』『生命式』
村田沙耶香さんの短編集2冊。
この人の作品はスラスラ読めるのに胃もたれする気持ち悪さがあるので(褒めてる)短編くらいの方がちょうど良く感じた。
『生命式』の方はカニバリズムやら人体のパーツで作った服や家具やらが出て来て気持ち悪さ指数は依然として高いけど、『信仰』は初めて村田作品を読む人にも薦められるかも。
マジョリティが信じてる常識や価値観をひっくり返すブラックユーモアは藤子・F・不二雄のSF短編に通じるものがあるんだよな。
村田さんの場合は何処までがギャグで何処までが真面目なのか分かりにくいけど。

『生命式』の表題作に出て来る「正常とはこの世で唯一許された発狂」と言う台詞は印象に残る。
『信仰』表題作ラストの「ジュウマンエンカエセ」も。笑

一編だけ内容に触れておくと、『生命式』に収録されてる『孵化』
自分というものが無く、中学、高校、大学のサークル、バイト先、職場とその場に適応する全く別のキャラになっていた主人公が結婚式にそれぞれの場の友人を呼ぶ事になってしまい、、、というストーリー。
本作ほど極端だと確かに気持ち悪いけど、誰しも多面的で場に合わせた自分になる事はあるんだよね。
「本当の自分じゃ無い」と思ってる自分も別に偽物なわけじゃなく、逆に「本当の自分」と思ってる自分も不確かなもので。
自分を知る事やブレ無い芯を持つ事も大切だと思う一方、自分というものを規定する必要は無いとも思う。

2024.4.25


三島由紀夫『金閣寺』
初三島。
小説家としてより活動家・煽動家としてのイメージの方が強くて敬遠してたんだよね。
とりあえず代表作と言われてる『金閣寺』を読んでみてイメージが変わったと言えば変わったし、「拗らせてる人」というイメージが更に強まったとも言える。

実際にあった見習い僧による金閣寺放火事件を元にしたフィクション。
貧しい寺に生まれた溝口は吃音の障害がある一方、父親の伝手で金閣寺で住み込み修行をしながら大谷大学に通わせて貰えるといった傍から見ると恵まれた面もある。
吃音や境遇そのものより、それらを切っ掛けに内面世界に引き籠もり「理解されないという事が唯一の矜り」などと思う程までに拗らせ更に熟成してゆくルサンチマンとナルシシズムが核。
そして自身とは対極の美の象徴である金閣寺への執着と逆恨み。
溝口を理解は出来ないけど理解出来なさを含めて京アニ事件が重なって見えたり。

それと、国語の教科書で読んでからずっと好きな梶井基次郎の『檸檬』も想起した。(確か授業では扱われなかった)
実際に放火するのと檸檬爆弾という些細な悪戯&妄想とでは大きな違いはあるものの通底するものはある。
『金閣寺』の作中に認識と行為の話が出て来るけど、『檸檬』の主人公は認識で、溝口は行為で変化を求めたんだよね。
うーん、やっぱり僕は『檸檬』の方が好きだな。

2024.4.20


城や寺、蔵に商店街と会場も面白いKYOTOGRAPHIEだけど、この京都新聞の地下の印刷所跡は特にテンション上る。
まだインクの匂いも残ってるんだよね。
ヴィヴィアン・サッセンの作品込みで今回一番好きな会場だったかも。

追記でお返事!

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2024.4.20


KYOTOGRAPHIEは前回以上にメッセージ性の強いテーマの会場が多かった気がする。
服装を理由に逮捕され道徳警察に殺されたイスラムの女性、迫害されるヤノマミ族、インドのカースト最下層などなど。
画像の会場は世界各国の裕福な子から貧窮してる子、様々な環境や境遇の子供の寝室を一同に展示してた。
パレスチナの難民キャンプの子とイスラエルの入植地の子が並んでたのが印象的。

川内倫子さんの祖父の死から自分の子供の誕生や成長まで家族の記録を撮り続けてる作品も良かった。
共同展示の潮田登久子さんの冷蔵庫の写真もだけど、日常や生活の一瞬一瞬が積み重なって作品になってるのは上記のようなメッセージ性の強い作品とはまた別の意味でちょっと胸に来る。
僕は家族の写真とか全く撮ってないなぁ。

2024.4.20


昨日は午前中はキュビズム展、午後はKYOTOGRAPHIE巡りという充実した1日を過ごせた。

キュビズムは抽象画よりは多少分かりやすいとは言え9割はイマイチ理解出来ないけど、ピカソの『肘掛け椅子に座る女性』は実物を見ると引き込まれたし、他にも数点いいなと思える作品に出会えた。
一応YouTubeで予習してから行ったものの、1つでも直感的に好きだと思える作品に出会えるだけでも十分。

KYOTOGRAPHIEは今まで生来の方向音痴を発揮して毎回道に迷ってたのに、今回は自分でも怖くなるくらいスムーズに回れた。
有料会場は余裕を持って全て回れたし、無料会場も行けなかったのは休館日の両足院と距離的に行くつもりの無かった出町柳商店街だけ。
いかに今まで無駄な時間を彷徨う事に使ってたのか思い知る。足の疲労度も全く違う。

当初はホテルで一泊してジブリ展や村上隆展、滋賀まで足を伸ばしてポケモン工芸展とかまで一気に回ろうかと思ってたけど結局日帰りにした。
その3つのイベントはたぶん人が多いから1会場だけでも疲れそうだしね。
シャツ1枚で歩いても寒くなく汗もかかないという一番良い気温の日に青天の下を各会場を巡って歩くだけでも良いリフレッシュになった。

画像は二条城の種がテーマの作品。
天井から吊り下げられた無数の電球の中に様々な植物の種が入ってた。

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